ゴールデンカムイに出てくる『尾形百之助』
階級は上等兵で鶴見中尉の率いる第七師団の小隊に属しながら、鶴見一派に対する造反を企てている人物。
射撃を得意とし、距離300m以内なら確実に相手の頭を撃ち抜けるだけの技量の持ち主。しかし戦闘での能力はそれほど無いとされる。
状況によって手を組む人物をコロコロと変える為、杉元からは『コウモリ野郎』と言われていた。
今回は尾形が射撃時にいつも出てくる軍人の足元の幻覚についてや、弟である勇作への罪悪感によって最後は自害した理由について考察していきたいと思います。
ゴールデンカムイ:尾形の幻覚は勇作への罪悪感の表れだった
ここでは尾形がアシリパを狙おうとしたときに必ず出てくる軍人の足元の幻覚は、弟勇作に対する罪悪感の表れだったのかについて解説していきます。
愛を全くもらえなかった両親を殺害
尾形が現在のような残忍な人物になったのは、過去の生い立ちがとても影響していると言えるでしょう。
尾形の父親は元第七師団長の『花沢幸次郎中将』で、母親は浅草の芸者だった。
花沢中将は本妻との間にも『花沢勇作』という1人息子がおり、勇作はとても愛を注がれて育った。
それとは正反対の尾形は全く愛を注がれず、母親と祖母の3人で暮らしていましたが、勇作が生まれてから全く顔をだすことも無く、芸者の息子である尾形を疎ましく感じていた。
母親は次第に頭がおかしくなっていき、父親である花沢中将が好きだったあんこう鍋を毎日のように作る日々が続き、絶対に来るはずの無い花沢中将の帰りを日々待っていた。
ある日まだ幼い尾形はあんこう鍋に殺鼠剤を入れ母親を殺害した。
理由は「少しでも母に対する愛情が残っていれば父上は葬式に来てくれるだろう」と考え母親を殺害したのです。
しかし父親である花沢幸次郎は葬式にはまったく来ませんでした。
尾形は大人になり入隊し後に、鶴見中尉の提案もあり父親である花沢幸次郎を殺害したのです。
鶴見は自分が師団長になりたいのと、満鉄の計画の邪魔になると判断し言葉巧みに尾形を唆し、父親殺害に至った。
これで鶴見中尉は自分を見てくれるだろう、愛してくれるだろうと思っての殺害もあった。しかし尾形のその考えも叶わず、結果として鶴見中尉からは全く愛を注がれなかった。
弟勇作を殺害した過去
尾形は義理の弟である勇作にはじめて出会った時面を食らったと語っています。義理の兄にあたる尾形の事を『兄様』と呼び尾形の事を本当の兄のように慕ってきました。
両親から祝福されて生まれた子供はこんなにも明るく屈託のない笑顔が出来るのかと驚きもあったのだが、それと同時に嫉妬のような感覚も生まれたような表情だった。
両親からの愛を受けていない自分を否定されたような感覚に陥ったのです。
尾形はこの頃から愛について執着し始めたのでは無いかと考えます。両親から愛されず祝福もされなかったから俺は人を殺しても何の罪悪感もないのか?
それとも人を殺して罪悪感が無いのは生まれながらの素質で生まれや愛などは関係ないのか?
それを確かめるためには親から愛されないと分からないという結果になった。父親から愛されるには勇作を殺害すれば一度捨てた尾形への愛に目覚めるはずという理由で勇作を殺害したのです。
しかし結果は父親である花沢中将は尾形に見向きもしなかった。尾形はやはり自分は祝福されない出来損ないの人物である事を実感した。
アシリパを狙うと出てくる亡霊
尾形はその後どの派閥にも属さずに1人で単独行動を始めた。尾形の目的は鶴見中尉を引きずり下ろし、自身が第七師団の師団長になることだった。
鶴見一派、土方一派の金塊争奪戦で一番鍵となってくるのは『アシリパ』である。
尾形は鶴見に金塊を奪われないように、鍵であるアシリパをいつもつけ狙い狙撃によって殺害しようとしていた。
尾形の狙撃の腕があればアシリパを狙撃することはそう難しいことではなかった。
しかしアシリパを狙撃しようと狙いを定めて撃とうした時に、いつも狙撃の邪魔をする軍人の足元の姿が出てきた。
その度いつも人の気配を感じ振り向くも、そこには誰の姿も無い。
そして毎回アシリパの狙撃を逃していた。後に分かった事は尾形の後ろや横にいつも立っている軍人の幻覚は、死んだ弟の勇作だったのです。
勇作の幻覚がいつもアシリパを狙撃しようとするときに出てきたいたのです。
尾形は気づいていない罪悪感
何故いつもアシリパを狙うと勇作の幻覚が出てくるのか?
他の人間を狙撃するときは絶対に出てくることはありませんでした。アシリパ以外の人物の狙撃は完璧に成功させていた。
尾形はこの時はまだ気づいてなかったのですが、これは弟勇作に対する罪悪感だったのです。
尾形はアシリパを弟勇作のように見ていた。親からの愛を沢山もらい、人を無差別に平然と殺すことなどは絶対にしない。
そんな勇作とアシリパを重ねて見ていたのです。
尾形は自分を唯一愛してくれた勇作を殺害した事を心の奥底では後悔していた。しかしそれは絶対に認めたくなかった。それを認めてしまうと自分の今までの生き方を全て否定してしまう事になる。
しかし心の奥底では勇作に対しての罪悪感があった。尾形はこの罪悪感に自身では気づいていなかったのか、気づかないようにしていた。
アシリパを狙撃することは、弟の勇作を狙撃する事と同じことであった。
だからいつもアシリパに銃口を向けると、幻覚である勇作が登場し、アシリパの狙撃を尾形の罪悪感が邪魔をしていたのです。
ゴールデンカムイ:尾形が最後に自害した理由を考察!
尾形は幻覚の正体は分からぬままで気にも止めていなかった。
そして戦いは五稜郭での暴走列車が最後の戦いの場となった。そこで尾形は遂に自身の罪悪感と向き合う時がきたのです。
アシリパを狙うも出てきた幻覚の勇作
尾形は暴走列車にて鶴見や杉元、アシリパの命を狙った。そして自身は全員を殺害し、金塊と土地の権利書を手みあげに中央政府に行き自身が第七師団の師団長になる計画を立てていた。
杉元と尾形は激しい戦いをする中、アシリパは杉元を救うために、遂に尾形に対して毒矢を放った。
アシリパが初めて人を殺害する覚悟を決め放った毒矢であった。毒矢は見事に尾形の腹部に命中した。
尾形は毒が回らないようにすぐさま毒矢を腹部から抜き取った。そして反撃の銃口をアシリパに向けた瞬間に、勇作の幻覚が見えた。勇作の亡霊と言えるほどハッキリした姿で今回は登場した。
邪魔しやがってと苛立つ尾形であったが、尾形の中に眠っていた内なる尾形が登場した。
ここからは尾形と尾形の中に居たもう一人の尾形との対話になった。
勇作と重なるアシリパが罪悪感に気づかせた
内なる尾形は冷静に語り始めた。
「アシリパに銃をむける度に勇作が出てきて邪魔するのは何でだ?勇作とアシリパを重ねていただろ?」と内なる尾形は言った。
内なる尾形は続けて「それと目を合わさないようにしてきた、向き合おうとしてこなかった・・・罪悪感だ」
尾形はその言葉を聞いて自分には罪悪感など無いと必死で否定した。勇作を殺した事は後悔などしていないと!
内なる尾形は「欠けた人間なんかじゃなく、欠けた人間に相応しい道を選んできたのでは?」この内なる言葉が尾形のすべてを語ったのでは無いかと思います。
勇作と重なるアシリパが尾形の罪悪感を気付かさせたのです。アシリパを殺害することが出来なかったのは勇作を過去に殺害した罪悪感があったからなのです。
自分の間違った道を見る事が出来ず自害
尾形は両親から愛されなかった自分の存在理由を求めて、欠落した人間なら殺人への罪悪感はないと言い聞かせてきたのに本当は罪悪感を抱えていたと気づいてしまった。
これ以上考えると罪悪感があったことを認めてしまう。認めてしまうと今まで自分が生きてきた生き方を全て否定することになる。
これ以上自身を否定する姿を見たくないと思ったのでしょう。見たくないから銃口を自身の左眼に向けたのでは無いかと思います。
これで左眼を撃てば何も見なくて済む。
銃口を自身の左眼に向けた尾形に対して、亡霊である勇作が「兄様は祝福されて生まれた子供です」と、尾形の今までの生き方を全否定してくれた言葉だった。
全否定された尾形は諦めがついたのか笑顔になり、勇作は大笑いをし列車から落ちて死んでいったのでは無いかと思われます。
もう少し早く自分の罪悪感に気づき、自身の生き方を見直していればこんな最後にはならなかったのでは無いかとも思いました。
アシリパが気づかせてくれた罪悪感は、尾形にとっては非常に辛く悲しい事実だったのでしょう。
まとめ
今回は尾形の罪悪感について解説していきました。
誰に対しても非情で、何の感情もない尾形だったのですが、尾形にもやはり勇作を殺害した事に関しては罪悪感が心の奥底にあったのですね。
アシリパと勇作を重ねて見ていた事で気付かされた事実でした。
最後は少し可愛そうな死に方でしたが、尾形にとってはこれ以上苦しむよりも最良の選択だったのではないかと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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